2/15、朝日放送の社屋に向かおうとしていたJR環状線のホームでLINEをひとつ受け取った。

T君のお母さんからだった。「Tが、大学受かったんです!」・・・やったなあ。

T君は2年前、Maluhia(WANA関西が運営している精神障害者の自立訓練所)の訓練生だった。

幼い頃から両親間で繰り返される面前DVで、恐怖のどん底に突き落とされる生活。

T君は11歳で学校に行けなくなった。それからは自宅にひきこもり、

両親の離婚後は、今度は自分が家族に暴力をふるうようになった。

お母さんに付き添われて私の目の前に現れたT君は18歳になっていた。

瞳の奥に人生への絶望が見えた。

私は彼と寸暇を見つけて熱い議論を繰り返した。父親のこと、夫婦のこと、そして暴力とは。

そこで彼はこんなことを言った。

「何をしてる時も、『お前は何をやっているんだ』という声が頭の中で鳴り響いている」

また、「自分は偏見の塊だ」とも。そう、それは自分自身に向けられた刃だった。

そしてこうつぶやいた。「普通になりたい」と。

体力がない彼に朝起きる力をつけるために、スタッフが毎朝自宅まで送迎にも行った。

私は彼を当時、教鞭をとっていた大学の授業にも連れて行った。

おおぜいの学生の中で、T君はポツンと座って私の講義を聴いていた。

半年後、T君はなぜかMaluhiaに来なくなった。

そのあと、受験勉強を始めたとどこかで聞いた。

あれから1年半、見事大学合格の知らせ。

8年間の時を経て、彼はやっとどこかに向かって動き出すことができたようだ。

彼には自分の苦しみを受け止めてくれる、家族でない大人が必要だったのではないか。

絶望を希望に変えた経験を持つ誰かと出会い、

「君もできるよ」と言われたかったのかもしれない。

T君もえらいけど、お母さんもえらかった。

DVの中、そして離婚後も、働いて、働いて、君と暮らしを守りつづけた。

彼女はずっと君の味方だったよ。

受験がすべて終わったら、2人を祝福に行くからね。

その日は暖かいといいなあ。

寒い寒い2月もまもなく終わる。

親に心を壊されたひとりの若者の心にも、ようやく春が訪れた。

長い、長い、冬だったね。